聞き手:あかりん 写真:てるちゃん 編集:しおね
あなたはどう考えているの?
………
周りのひとのやりたいことや好きなことに合わせることが多かった私。
小学校6年生のころ、担任の先生に「自分の気持ちを表現しなさい」と言われたことを今でもはっきりと覚えています。
現在は就職活動中ということもあり、人生の主役は自分なんだなあと改めて感じるようになりました。
自分らしく生きるには?ありたい自分ってなんだろう?
この記事を読んで、人生の選択に悩んでいるひとの心が少しでも明るくなればいいなと思います。
憧れの又吉さん
今回お話を伺ったのは、私がずっと会いたいと思っていた又吉友紀さん。
子ども食堂さとの会の副代表など、数多くの取り組みをされています。
↓子ども食堂さとの会の記事は、こちらから読むことができます↓
又吉さんは、東広島市内でSDGsやアップサイクルに関する活動を行っています。
アップサイクルとは、本来捨てられるはずのものを新たな作品に再生すること。
特に注目を集めている作品は米袋・小麦粉袋を再利用したハンドメイドのバッグです。
― ハンドメイドを始めたきっかけは何だったのでしょうか?
元々家庭科などでものを作ることが好きだったけれど、子育てが始まってからはそういうことをする暇がなかったんです。娘が幼稚園に入り、バッグを作らないといけなかったので久しぶりに作ったらすごく楽しくて。自分用に作ってみたいと思ったんですよ。
初めはなんとなく好きだったハンドメイド。
作品をFacebookに載せると「欲しい!」「買いたい!」という声がたくさんあったようです。
そんな中、たまたまテレビで紹介されていた米袋バッグに感動した又吉さん。
家にあった米袋を使って作り、地域のマルシェに並べてみると大人気だったそうです。
― なぜご自宅ではなく、田口で一軒家のアトリエを構えているのですか?
米袋バッグの反響が大きくなり、米袋や小麦粉袋を提供してくれるひとが増えたんです。我が家に置いているとかさばるし、米も出るので大変で。作業場を探していたときに知り合いのつてでここを借りることになりました。
― ここであの米袋バッグを制作されているんですね。
野球のシーズンは隣の球場から「かっ飛ばせ―」とか聞こえて、にぎやかになりますね(笑)緑で癒されながら、作業できる場所です。隣には果樹園もあって、スモモなどを植えて育てたりもしてますよ。
米袋バッグがどのようにできているのかを見せてくださいました。
布に比べて固い米袋。まち針も刺せない生地で、一度失敗すると穴が目立ってしまい、使い物にならないそうです。
米袋があっという間にバッグに生まれ変わる瞬間に立ち会うことができました。
ハンドメイドが変えた、過去の自分
現在は東広島市で様々な活動をされている又吉さん。実は、これまでは別のお仕事をされていたそう。そんな又吉さんの、物事に取り組む原動力は一体何なのでしょうか。
昔から好奇心が強いタイプでした。地元は山口県岩国市で、母の実家が米軍基地の近くなんですよ。そのおかげで、英語を身近に感じていて、違う言葉や国を知りたいという思いが強かったんです。知らないものを吸収するのがすごく楽しくて。大学卒業後にシアトルの隣のタコマという小さい街に一年だけ留学しました。当時は「絶対英語関係の仕事に就くんだ」という気持ちで勉強してましたね。日本に帰ってからは、米軍基地の方に車を売る仕事や子どもに英会話を教えていました。
― インスタグラムの投稿に昔はネガティブだったと書いてありました。私の中での又吉さんのイメージとは全く違って、想像ができなかったんですが……。
そうなんです。私は好奇心が勝ってしまうので、母と考えが合わず、ぶつかることが多かったんですよ。留学も否定的でした。自分の「好き」を理解してもらえなかったんですね。だから、私がいいと思うことは家族に迷惑をかけることなのかもと思っていたんです。
家族の中でいい子でいなくちゃいけないと思っていたから、ちょっとしんどかったんですよね。
自分が子育てするときも、いい母親、いい妻でなければいけないと思っていました。全部他人軸で考えて、育児本に書いてある通りでないといけないと悩んでいました。「子どもは左にいきたいんだな、たしかに左も面白いかもしれないな」と思えなくて。思い通りにならない時は自分が悪いと感じてました。
― 他人軸で考えてしまうのは分かります。つい他の人の言うことで判断しちゃいますよね。でも、なかなか抜け出せなくて困っちゃうんですよね。
素敵なひとのまねをすれば素敵になれるだろう。できるひとのまねをすればできるだろう。でも、同じようにしても自分には似合わんとかね(笑)私も抜けるまでかなり時間がかかりました。そういう繰り返しの中で、ハンドメイドや高め合える仲間に出会って、自分がやっていることを認めてもらえる機会が増えて、自分らしくいていいんだと思えるようになりました。育児本も捨てて、子どもが「母さんすき」って言ってくれたらそれでいいなと思えるようになりました。
本当にハンドメイドのおかげですね。自分が自分を好きでいた方が結果やっぱりよかった、そう思いました。
子どもも学校でSDGsを習ったら興味を持って「母さんすごいじゃん」と 言ってくれたりします。母親だけじゃなくて、ハンドメイドの活動を頑張っている私を見せることができているのもすごくよかったなと思っているんです。
心に蓋をせず、素直な感情を
― 私はこれから人生の選択をしていく時期に入ります。自分らしさを大切にするために心掛けていることはありますか?
「自分の好きなことをやっている」という自分軸があることが、どんな時でも大切だと思います。私は、自分の心に蓋をせず「いい」「かわいい」「素敵」「おしゃれ」を口に出したり、書いたりしてますよ。視覚化したり、言ったりしていると、「じゃあやってみない?」と言われたりするしね。図々しいかなと悩まず、案外言ってみるものです。
― 又吉さんが主催するアトリエマルシェは好きが溢れているんですか?
そう!私、主催者なのにずっと遊んでるんですよ。東広島に住んでいるひとって県外出身のひとが多いから、情報交換して助け合って、わけ隔てなくすぐ仲良くなれる不思議なまちだと思う。それが心地よくて。周りからこうした方がいいよと言われるのではなく、自分が好きなひとを集めて、好きな場所で、好きな時間に終わって、ちゃんとしたマルシェではなくて申し訳ないけど、それがすごく楽しいかなって思いますね。
「自分らしく生きること」は私の目標でもありますが、今の私は自分軸がブレブレです。
やりたいことって何だろうと毎日頭を悩ませています。
自分の心に素直にあろうとすることや「好き」を表現していくことは難しい。
けれど、常に心の動きを観察することはできます。
これから先、何かを決断するとき、自分の「好き」や好奇心を軸に一つ一つ丁寧に選択していきたいです。
そして、少し大人になって振り返った時、自分らしさはやっぱりこれだなと感じられるといいなと思います。
― 最後に今後の活動の展望を教えてください。
11月1日に「アップサイクル協議会 アオイチキュウへ」を立ち上げました。企画チームや商品作成チームがあり、一般市民のみなさん、もちろん子育て中の主婦や学生さん、誰でも参加できます。その中で意見を出してもらい、東広島市の廃材で商品を作り、ゴミを減らしていきたいです。活動の幅を広げながら、地域の雇用を増やして、循環を創っていきたいですね。
― よかったら参加させていただきたいです!
ぜひぜひ!お待ちしています。
おまけ
”infinity”は又吉さんが一番好きな英単語だそう。好奇心は無限大に可能性を広げてくれます。
自分の心を大切に、自分らしい人生を。
アップサイクル協議会 アオイチキュウへ
代表 又吉友紀
本部 東広島市西条町寺家8068―3
製作所 東広島市西条町田口字大幡67―1(アクアスタジアム隣)
Mail:info@forourblueplanet.com
HP:forourblueplanet.com(只今制作中)
instagram:@infinity_yuki.m
ライターだより
又吉さんに会いたくて、米袋バッグも買いに行くほどの大ファンです。自分らしく生きてていいんだな。当たり前だけど、自分を否定せずに生きていきたい。そう思えた取材でした。
カメラマンだより
大人になって感じる窮屈はきっと、自分以外が要因でやりたいことができなくなるためで、それを解決するには、自分のやりたいにどこまでも忠実に居つづけることが本当に大事なのだと、改めて実感した取材でした。今度、米袋のカバンを買いにいってみようと思います。
編集だより
1年前の夏頃、さとの会のお弁当配布で又吉さんと知り合いました。出身高校も一緒で親近感を抱いており、「早くお話が聞きたい!」と思っていました。それを叶えさせてくれたライターに感謝です。
【かいたひと】あかりん/ ライター
広島県出身。ねことお花とかわいいものが好き。
柳のように生きることが目標です。
【とったひと】てるちゃん/ カメラマン
広島県出身で、初恋の車であるトヨタの80スープラが欲しくてたまらない大男。
特技は食べることとぼーっとすること。
Instagram→terumi1386